2017年5月8日

ひきこもりの当事者たちとつくった情報誌「IBASYO」

表紙ひきこもり・不登校をしている青年たちと一緒に情報誌(全66ページ)を創りました。
当事者ならではの視点に満ちた内容となっています。
情報誌に掲載されている内容については、このホームページで少しずつ紹介致します。

グリーンコープの補助金(100円基金)で作成することができたので、希望する方には、無料で差し上げています。
ただし、送料はご負担下さい。
希望する方は、お問い合わせのフォームでご連絡下さい。
尚、冊数に限りがあります。
なくなりしだい、無料での配布は終了致します。

<情報誌の目次> 全66ページ

はじめに

1手記
・不登校、不安に襲われる日々
・僕のアルバイト日誌
・たかが太鼓の達人、されど太鼓の達人

2居場所
・お気に入りの時間 ~癒しの世界~
・Go  fishing!
・私の居場所 ~本の紹介~
・私のお気に入りの映画紹介

3イラスト
・翠雨の世界
・くさかんむりの世界
・漫画 「はんぱねぇ世の中」

4情報
・中学校卒業後の道 ~自分に合った道を選ぼう~
・高認(高卒認定試験)体験記

5おわりに

不登校をどう理解するか(最終)

説得されて登校する時

 不登校だった子どもの中に登校を始める子どもがいます。思いは様々です。ミカさんは小学校の時に不登校でした。当時をふりかえって語ってくれました。

■ミカが学校に行ってみた理由(わけ)
 ミカ(仮名)は、小学2年生から不登校を始めました。小学4年生の時、担任に何度か登校を促されました。「午前中だけでも、学校に来てみないか?」「給食だけでも、来てみないか?」「保健室登校をしてみないか?保健室に来ると、出席になるよ?」「運動会に参加してみないか?」…
ミカは「保健室に行けるんやったら、教室にも行ける。それが、できんから苦しいのに…。」と思いつつも「あ、はい…。」と答えることしかできなかったと話してくれました。

 ある時、担任と母親が話し合って「4時間目まで登校させてみる」ことを決めました。 母親が「4時間目まで行ってみたら。」と促すけど、自信がなかったから黙っていました。母親の機嫌が悪くなり、「黙っていたらわからんよ。あなたがどうしたいのかをハッキリしないと。」と怒りはじめたそうです。
 仕方がなかったので「4時間目だけ行ってみる。でも、4時間目が終わったら、すぐに帰るよ。」と約束しました。母親が嬉しそうに学校に連絡をしました。

 久しぶりの教室はとても緊張しましたが、「この時間が終われば帰れる。今日頑張れば、明日はゆっくり休める」と思い、何とか頑張って居ることができました。担任は、友だちと楽しそうに話をしているミカを見て「大丈夫そう」と思ったようで、4時間目が終わっても「帰って良いよ。」「この後、どうする。」と言ってくれませんでした。自分からは、他の友だちとの関係で「帰って良いですか?」とは言えません。ひたすら、先生から言葉をかけてくるのを待っていました。結局、給食の時間まで教室に居ましたが、気分が悪くなり我慢できなくて「先生、気分が悪いので帰って良いですか?」と申し出ました。

 担任が「今日はすごい。給食まで居れたね。」と、嬉しそうに言いました。でも、ミカは「1時間のはずだったのに、どうして帰してくれないの。約束が違う。」と腹が立ったそうです。
家に帰ると、母親が「すごいねえ。給食まで居れたね…。明日はどうする?」と聞いてきました。「明日は、無理かもしれない。」と答えるのが精一杯でした。
 ミカは当時の登校について、次のように語ってくれました。
「学校が、本当に楽しかったら誰かに言われなくても行くけど、私の場合は楽しくなかった。それでも無理して学校に行ったのは、お母さんが喜んでくれたから。学校に行くことができなくて、親を悲しませてばかりいるから、なんとかして喜んでもらいたかった。それと、学校に行くとお母さんの機嫌が良くなる。そうすれば、家が私の居場所になったから…。」
(プライバシー保護のため、少し事実と変えています)

■ミカの体験から見える不登校理解と支援
①不登校の子どもが登校する時は、「何か良いことがあるかもしれない」と思う時もあるが、ミカのように周りの大人のために行っている場合がある。特に、家族の言い合い(葛藤)が強いと、「自分が学校に行っていないからだ」と考えて、無理をする場合がある。
②登校した際に「普通」にしていても、本人は無理してテンションを上げている場合がある。だから、「このまま慣れさせる」のは、大人の善意であっても本人にとってはソフトな押しつけとなり、結果として大人への信頼を失うこととなる。それは、後々のことを考えるとマイナスとなる。
③帰りの時間を約束して登校させたら、時間を延ばしたい時は、誰もいない所で同意をえる。